シティボーイへの登竜門
「ひとりでスタバに行ってスムーズに注文できる」
これがシティボーイを名乗る上での最低ラインだと思ってる。
わかっていながら今まで敬遠していたひとりスタバ。
2017年も終わりを迎えつつある中、またひとつ真のシティボーイに近づきました。
これまでも、誰かと一緒になら何回かは行ったことのあるスタバ。
友達と行ったときは「なんでもいいからティーをおひとつお願いします!」と友達に注文して席で待ってるか、前の友達の注文を呪文として覚えてそれをそのまま復唱するスタイルで乗り越えてきたスタバ。
本当は俺も白いモリモリが乗ってるやつがいいのに、いつもそっけないコーヒーや謎のティーばかり飲んでいたスタバ。
何のティーかわかんないけど勇気を出して頼んだティーをストレートかどうか聞かれて「いやトールで!」と答えて静寂を生んだスタバ。
そんなスタバにかなりの苦手意識を持った俺に試練とも呼べる出来事が入社一年目の外出先で起こりました。
「ちょっとスタバでコーヒー買ってきて。」
上司から突然お金を渡されて思わず固まってしまう。
(スタバデ…コーヒー…カッテクル…)
半ば思考停止になりかけながらも、同期からの視線を感じ「わかりました!トールでいいですよね?」とこなれた感を演出する。
とにかく今は同期に俺がスタバビギナーであることをバレるわけにはいかない。
山から下りてきたゴリラだとバレてしまう。
「歩く拡声器」の異名を持つ同期からそんな扱いを受けてはたちまち噂が社内中に広まり、憧れのシティボーイなんて夢のまた夢だ。
俺の持ち合わせているスタバの知識と言えば「サイズはトールがベタ」ということくらいだ。
とりあえず困ったら「トールで!」と言えばいい。
入国審査ではサイトシーン、スタバではトールサイズ。
これさえ連呼してればあとは向こうが察してなんとかしてくれる。
大事なのは相手の目を見て常に堂々をすること。
少しでも怯んだ様子を見せると一気に呑まれてしまう。
ここはこういう世界だ。
俺はこの方法でアメリカの入国審査にとんでもない時間を要した。
とにかく怪しまれる前にパパッと済ませてしまうに限る。
ひとりになってしまえば注文時に多少もたつこうがバレないし。
足早にその場を離れようとすると「お前らの分も買ってこい」と言われ、同期も一緒に行くことに。ガッデム。
(仕方ない、ここは同期に注文させて俺もそれに続こう…)
「私いらないから濱本さん頼みなよ!」
(?!?!??!)
なぜついてきた!!!!!
なぜ!!!
ついてきた!!!!!
もはや嫌がらせにしか思えないが、もう後には引けないので意を決してレジへ向かう。
「アイスコーヒー2つ。トールサイズで!」
「かしこまりました。」
(お、いけたか…?!)
「アイスコーヒーは濃いめと辛めにできますが、いかがいたしましょう?」
(What's happen??!)
まじで油断ならねえ。
こんな質問今まで聞いたことないよ。
進研ゼミにもこんな問題なかったじゃんか。
てか濃いめも辛めもどっちも濃ゆくない?!
なにこれもう全然優しくない!
コーヒーも質問も優しめがいいです…
「じゃあ…辛めでお願いします…」
(やられた…完全に呑まれた…)
コーヒーを受け取ると、同期がにやにやしながら駆け寄ってきた。
「私コーヒー飲まんからよくわからんけど、辛めのコーヒーとかあるの?軽めとかではなくて?」
「えっ」
(やーめーてえーーーー!!!!)
エルサさながらの悲鳴を心の中であげる。
その冷ややかな目をやめなさい。
少しも寒くないわ。
この日を境にスタバを避け続けてきました。
でもやっぱり2017年のうちに克服しておきたい…
そして今日、満を持してひとりスタバデビューしてきました。
緊張がバレないように澄ました顔でレジの列に並ぶ。
(トールサイズ、トールサイズ、トールサイズ…)
落ち着くように頭の中で念仏のように唱える。
幸い俺の順番まではまだ時間がある。
この間に周りを観察して相手の出方を見よう。
「お客様ー!」
(っべー!!!店員さんに話しかけられたー!!なぜか俺だけピンポイントで話しかけられたー!!なにここ会員制なの?一見さんお断りなの?違いますよ!見にきただけです!注文とかしないですから!サイトシーンです!サイトシーン!!)
「メニューご覧になりますか?」
(いやメニューあるんかーーーい!!!)
早く出せよ。それ1番最初に出せ。
自動ドアが開くや否や出せ。
いらっしゃいませと同時に出せ。
それさえあれば俺すげー安心すっから。
俺だけに渡されたことに若干納得がいかなかったけど、これさえもらえばもうこっちのもんよ。
メニューを開いたら絵が同じなのに違う名前の飲み物がいっぱいあったけど、もうそんなことはどうでもいい。
白いモリモリが乗ってればもうなんでもいいよ。
「これのトールサイズください。」
なにこれ。余裕じゃん。
こうして無事ひとりスタバデビューを終えて、またひとつシティボーイへの階段を登りました。
白いモリモリ、そんなに美味しくなかった。
おしまい