レオナルド・ダ・ピンチ
なんか今年の梅雨わかりにくかったよね。
朝降ってたのに帰る頃には晴れてたり、朝は晴れてたのに急に土砂降ったり。
1日のうちにコロコロ変わりすぎ。
乙女心かよ。
おかげさまでありとあらゆる場所にビニール傘を寄付してる。
でも勘違いしてほしくないのは、俺だってただやみくもに傘を置いていってるわけじゃないってこと。
俺が神戸市内の各所に散りばめたビニール傘たちを上空から見て、それぞれの点を線で結ぶと巨大な絵ができあがっから。
ダヴィンチコード的な展開始まっから。
なのによー、お前ら俺の傘勝手に持っていくもんだからよー、いつまで経ってもダヴィンチコード的な展開始まんねえじゃん。
迷宮入りどころか、このままじゃお蔵入りとかつらすぎる。
頼むからダヴィンチらせてくれよ。
ちなみに会社の置き傘も全パクリ。
何本か置いてたやつがまるっとなくなってる。
同期はビニール傘使わないから、もう犯人は上司の中の誰かなのは確定なわけ。
だから全員が揃ってるときそれとなく探りを入れてみることにした。
もう構図は完全に最後の晩餐状態。
これはビッグ・ダヴィンチ・チャンス!!!
この中にユダがいる。
ダヴィンチ「なんかビニール傘使ってると、たまに自分のかどうか不安になることありません?」
所長「俺ビニール傘使わん」
室長「俺も」
同期「わたしも」
主任「気にしたことない」
ノー・ダヴィンチでフィニッシュです。
主任の顔面にユダって書いてあった。
謎がひとつもない。
松田翔太の出番なし。
暇を持て余して部屋でギャツビーで遊んでる。
そんなこんなですべての傘とダヴィンチ・チャンスを失い、会社でひとり、なんとも言えない表情で窓の外を眺めてた。
その佇まいはモナリザそのもの。
モナリザの表情についていろんな議論がされてるけど、俺正解知ってるよ。
あれはビニール傘を盗まれたときの顔です。
しばらく外を眺めてたけど一向に雨が止む気配がないので、しかたなく濡れて帰りました。
途中で傘は買わなかった。
買ってもどうせすぐになくなるし。
家に着く頃には当然全身びしょ濡れで、でも何故か不思議な満足感があった。
着ていた服を全部放り投げて床に寝転ぶ。
(別に傘なんてなくてもどうってことないな。)
大きく手足を広げて、薄暗い部屋で無表情な天井をしばらく眺めていた。
外から聞こえていた雨音もいつしか消えていて、静寂の中に包まれる。
世界に自分だけが存在してるかのような不思議な感覚。
俺は誰もいない世界で、「ノー・ダヴィンチでフィニッシュです…」と呟いた。
梅雨明けは近い。
そのときの俺の様子を書いたのが、かの有名なウィトルウィウス的人体図です。(大嘘)
おしまい